「スーパーエンジニアリングプラスチックは種類が多く、どれを選べばよいかわからない」
「PEEKやPPS、PIにはどのような違いがあるのだろうか」
そのようなお悩みを抱えていませんか。
スーパーエンジニアリングプラスチックは、一般的なエンジニアリングプラスチック(エンプラ)より高い耐熱性や機械的強度、耐薬品性などを備えた高機能樹脂です。
しかし、種類によって得意とする性能や価格が異なり、選び方を誤ると性能不足やコストアップにつながるため、使用環境や要求性能に合った材料を選ぶことが重要です。
本記事では、スーパーエンジニアリングプラスチックの代表的な5種類の材料の特徴や用途、材料選定のポイント、設計や加工時の注意点をわかりやすく解説します。
自社部品に適した材料を選定する際の参考にしてください。
スーパーエンジニアリングプラスチックとは?エンプラより高性能な樹脂材料の魅力
スーパーエンジニアリングプラスチック(スーパーエンプラ)とは、一般的なエンジニアリングプラスチック(エンプラ)よりも、耐熱性や機械的強度などに優れた高機能樹脂の総称です。
厳密な定義はありませんが、エンプラの目安である100℃以上の耐熱性に対し、スーパーエンプラでは一般的に150℃以上の高温環境でも連続使用できる耐熱性が基準とされます。
また、スーパーエンプラは耐熱性だけでなく、耐薬品性・耐摩耗性・機械的強度・電気特性・寸法安定性などの優れた特徴もあり、得意とする性能は材料によって異なります。
金属と比べて軽量で、絶縁性や耐薬品性など樹脂ならではの特性を活かせるため、自動車・半導体製造装置・電気機器・航空宇宙・医療機器など幅広い分野で採用されています。
高性能な樹脂である反面、材料費は高い傾向にあるため、使用環境や要求性能に合った材料を選ぶことが材料選定の基本です。
スーパーエンプラではオーバースペックになる場合、一般的なエンプラやフッ素樹脂も含めて比較し、必要な性能とコストのバランスを考慮して選定しましょう。
エンプラやフッ素樹脂については、以下の記事で詳しく解説しているので、必要に応じてご確認ください。
関連記事:エンジニアリングプラスチックの材料選定ガイド|種類・特徴・選び方を解説
関連記事:【設計者必読】フッ素樹脂5種の使い分けと失敗しないための設計ルール
【主要材料一覧】代表的スーパーエンジニアリングプラスチック5種の特徴と用途

スーパーエンジニアリングプラスチックにはさまざまな種類があり、適切な材料を選定するためにも、それぞれの特徴を把握しておくことが大切です。
ここでは、代表的なスーパーエンプラであるPEEK、PPS、PI、PAI、PEIの5種類について、特徴と主な用途を紹介します。
1.PEEK|高耐熱・高強度で半導体や医療部品に使われる
PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)は、耐熱性や機械的強度、耐薬品性を高い水準で兼ね備えた代表的なスーパーエンプラです。
融点は約343℃で、グレードによっては250~260℃程度の長期使用も可能です。
高温下でも機械的特性を維持できるうえ、耐摩耗性や寸法安定性にも優れているため、厳しい使用環境の部品に活用されます。
代表的な用途としては、半導体製造装置部品や航空機部品、医療機器部品、軸受、ギアなどがあげられます。
材料費は高いため、性能の高さだけで選ばず、求める性能に対してPEEKが本当に必要かを見極めることが重要です。
2.PPS|耐薬品性・寸法安定性に優れ自動車部品に使われる
PPS(ポリフェニレンサルファイド)は、耐熱性に加えて、耐薬品性や寸法安定性に優れたスーパーエンプラです。
吸水率が低く、湿度による寸法変化を抑えられるため、精度が求められる部品に適しています。
強酸や強アルカリ、溶剤、燃料など幅広い薬品に対する耐性を持ち、電気絶縁性や難燃性にも優れている点が特徴です。
自動車の機構部品や電装部品、バルブ、ポンプ、電気・電子部品などに使用されています。
PEEKほどの耐熱性や靭性が必要ない場合は、要求性能とコストのバランスを考えて、PPSを検討してください。
3.PI|高耐熱・高絶縁で半導体部品に使われる
PI(ポリイミド)は、スーパーエンプラの中でも特に耐熱性に優れ、高温環境でも機械特性を維持できる材料です。
種類やグレードによって性能は異なりますが、長期的に300℃程度まで使用できるものもあります。
さらに、電気絶縁性や断熱性、耐摩耗性、耐放射線性にも優れており、高温環境と電気特性の両方が求められる用途でも使用可能です。
代表的な用途としては、半導体製造装置の絶縁部品やICテストソケット、電気絶縁部品、航空宇宙部品、軸受、シールなどがあげられます。
PIには複数の種類や製造方法があるため、樹脂名だけでなく、グレードごとの物性や加工方法まで確認しましょう。
4.PAI|高強度・耐摩耗性に優れ摺動部品に使われる
PAI(ポリアミドイミド)は、高温環境でも高い強度や剛性を安定して維持でき、耐摩耗性や摺動特性にも優れたスーパーエンプラです。
引張強度や圧縮強度が高く、熱膨張も比較的小さいため、高温下で機械的な負荷を受ける部品に用いられます。
PTFEやグラファイトなどを添加した摺動グレードでは摩擦や摩耗を抑えられるため、無潤滑環境で使用される部品にも適した材料です。
ベアリングや軸受、ギア、シール、半導体製造装置部品、航空宇宙部品などに採用されています。
吸湿によって寸法が変化する場合があるため、精密部品では使用環境や要求精度まで考慮して選定することが重要です。
5.PEI|耐熱性・難燃性に優れ電気電子部品に使われる
PEI(ポリエーテルイミド)は、耐熱性や機械的強度、難燃性、電気絶縁性をバランスよく備えたスーパーエンプラです。
製品によっては長期使用温度が約170℃で、広い温度範囲で強度や剛性を維持できます。
難燃性や低発煙性、電気絶縁性、寸法安定性にも優れているため、コイルやヒューズ周辺部品などの電気・電子部品、航空宇宙部品、各種絶縁部品などに使用されています。
PEEKやPIほど高い使用温度を必要とせず、難燃性や絶縁性、寸法安定性を重視したい場合に有力な選択肢です。
材料選びで迷わない!スーパーエンジニアリングプラスチックの選び方
スーパーエンジニアリングプラスチックを選ぶ際は、ただ性能の高い材料を選ぶのではなく、部品に必要な性能を整理し、用途に見合った性能を持つ材料を選定することが基本です。
材料選定では、主に以下のポイントを確認します。
- 温度条件
想定される最低温度と最高温度を確認し、各材料の耐熱性を比較します。
高温下で荷重が加わる場合は、耐熱温度だけでなく、温度上昇による強度低下やクリープ特性(一定の荷重が長時間加わった際の変形しにくさ)も確認が必要です。
- 耐薬品性
薬品に触れる部品では、薬品の種類だけでなく、濃度・温度・接触時間まで含めて適合性を確認します。 - 機械特性・摺動特性
荷重がかかる部品では引張・圧縮・曲げ特性、摺動部では摩擦特性や耐摩耗性を確認します。
- 寸法安定性
精密部品では、温度変化による寸法変化や吸水による影響を抑えるため、熱膨張係数や吸水率の確認が必要です。
- 用途特有の要求性能
電気絶縁性や難燃性、滅菌対応、低アウトガスなど、使用環境や用途に応じて必要な性能を確認します。
これらの条件から候補を絞り込んだら、材料価格や加工費、入手性も比較してオーバースペックにならないように注意して材料を決めます。
同じ樹脂でも、無充填材・ガラス繊維強化・炭素繊維強化・摺動グレードなどによって性能は大きく異なるため、注意しましょう。
スーパーエンプラで失敗しない!設計・加工で押さえておくべき4つの注意点

スーパーエンジニアリングプラスチックは高性能な材料ですが、金属とは熱膨張や加工時の挙動が異なります。
また、高価な材料も多いため、一般的な樹脂と同じ感覚で設計すると、寸法不良や設計変更、コスト増につながることもあるでしょう。
ここでは、材料候補を決めた後の部品設計や加工で注意すべき4つのポイントを紹介します。
1.使用温度を踏まえて寸法変化や強度低下を考慮する
スーパーエンプラは耐熱性に優れていますが、温度変化で熱膨張しないわけではありません。
温度が上がると寸法や機械的特性も変化するため、実際の使用温度を想定した設計が必要です。
特に高精度部品では、常温時の寸法だけでなく、使用温度における線膨張係数を踏まえて公差やはめあい、クリアランスを設定します。
また、樹脂は温度によって強度や寸法の変化のしやすさが変わるため、耐熱温度だけで判断せず、実際の使用温度で十分な性能を維持できるか確認する必要があります。
高温環境で荷重が加わる部品では、温度・荷重・使用時間を含めて総合的に評価しましょう。
2.材料特性による加工の難しさを考慮する
スーパーエンプラは高い耐熱性や機械的強度を持つ一方、材料によってはその特性が加工の難しさにつながる場合があります。
たとえば、スーパーエンプラは融点や軟化温度が高いため、射出成形では高い成形温度が必要になる材料があり、一般的な樹脂よりも高温に対応できる設備や金型が必要になります。
また、材料によって流動性や収縮率が異なるため、成形条件を適切に設定しなければ、寸法精度の低下や成形不良につながるでしょう。
切削加工でも、加工時に発生する熱や応力によって変形する可能性があります。
特に、ガラス繊維(GF)や炭素繊維(CF)で強化したグレードは工具摩耗のリスクが高く、材料に合わせた工具や切削条件の選定が求められます。
このように、スーパーエンプラは材料やグレードによって加工の難易度が異なるため、材料特性だけでなく、加工性まで考慮して選定することが重要です。
3.材料費や加工費が高くなりやすいことを考慮する
スーパーエンプラは、一般的な樹脂や通常のエンプラより材料費が高い傾向にあります。
なかでも、PEEKは高価な材料であるため、必要以上に高性能な材料やグレードを選ばず、要求性能に見合った材料を選定することが大切です。
切削加工では完成品より大きな板材や丸棒から削り出すため、形状によっては除去量が増え、材料のロスによってコストが高くなる場合があります。
また、スーパーエンプラは加工難易度が高い材料が多く、一般的な樹脂より加工費が高くなりやすいです。
したがって、過度に厳しい公差や不要な表面粗さ、複雑な形状の指定を避け、加工工程や加工時間を必要以上に増やさないことが重要です。
材料単価だけでなく、材料の使用量や加工工数も含めた部品全体のコストで判断しましょう。
4.材料選定や加工可否を早めに加工会社へ相談する
スーパーエンプラは、同じ樹脂でも無充填材や強化材、摺動材など、グレードによって特性や加工性が変わります。
また、グレードによって工具摩耗や変形の起こりやすさ、実現可能な公差、加工条件なども異なるため、設計段階では判断しにくいケースが多いです。
したがって、材料選定の段階から加工会社へ相談しておくと、設計変更やコスト増のリスクを抑えられます。
候補材料や使用環境、要求精度、形状が固まった段階で、要求公差への対応可否やコストを抑えられる代替材料などを相談すると検討がスムーズです。
加工会社を選ぶ際は、対象材料の加工実績や材料提案力、試作対応の可否を確認しましょう。
まとめ|スーパーエンジニアリングプラスチックの強みを活かして高性能な部品を実現しよう
スーパーエンジニアリングプラスチックは、一般的なエンプラより高い耐熱性を持ち、耐薬品性や機械的強度、耐摩耗性、電気特性などにも優れた高機能樹脂です。
スーパーエンプラにはさまざまな種類がありますが、代表的な5つの材料にはそれぞれ以下の強みがあります。
- PEEK:総合性能
- PPS:耐薬品性・寸法安定性
- PI:高耐熱性・絶縁性
- PAI:強度・耐摩耗性
- PEI:難燃性・電気特性
一方で、スーパーエンプラには高価な材料も多く、必要以上に高性能な材料を選ぶとコストアップにつながるため、使用環境や要求性能に合わせた材料選定が求められます。
また、材料やグレードによって加工性が異なるため、樹脂の特性を理解し、適切な加工条件を設定できる加工メーカーへ依頼することが重要です。
プラスチック精密切削加工を手がける伸光製作所では、創業以来培ってきた技術とノウハウを活かし、スーパーエンプラを含む樹脂の精密切削加工に対応しています。
スーパーエンプラの材料選定や加工可否で迷った場合は、お気軽にご相談ください。
