「旋盤加工で本当にこの形状を作れるのか」「設計した形状では、加工費が高くなりすぎないか」と悩んでいませんか。
旋盤加工は、工作物を回転させながら刃物を当てて削ることで、軸やシャフトなどの円筒形状の部品を高精度に仕上げられる加工方法です。
旋盤加工はコストが高い傾向がありますが、加工性を考慮した形状や適切な公差設定をすれば、加工時間の短縮や加工費の削減が可能です。
本記事では、旋盤加工の仕組みや種類だけでなく、設計・発注時に押さえておきたいポイントまでを分かりやすく解説します。
自社部品に適した加工方法を見極め、品質とコストを両立した設計・発注につなげるために、ぜひ参考にしてください。
旋盤加工で軸やシャフトを高精度に!円筒部品の品質を支える加工技術
旋盤加工とは、チャックで固定した工作物を回転させながら、バイトと呼ばれる切削工具を当てて材料を削る加工方法です。
バイトを軸方向や半径方向へ動かすことにより、外径・内径・端面・溝・ねじなどの形状を加工できます。
旋盤加工は、一般的に以下の工程で進めます。
- 材料と工具の取り付け
- 形状を大まかに削る荒加工
- 寸法や表面を整える仕上げ加工
- 測定・検査
このように、旋盤加工は材料そのものを回転させる特性があるため、シャフト・軸、カラー・ブッシュ・ローラー・フランジなどの円筒部品の製作に適しています。
また、NC旋盤であれば、工具の位置や送り速度、回転数をプログラムによって制御できるため、同じ形状を繰り返し加工する場合でも、品質のばらつきを抑えられます。
量産に適したNC加工の仕組みや特徴については、以下の記事で詳しく解説しています。
興味のある方は、あわせてご覧ください。
関連記事:【NC加工の教科書】仕組み・加工方法・汎用加工との違いを解説
旋盤加工の種類がわかる!代表的な加工方法と部品形状
旋盤加工では、工作物に当てる工具の形状や位置、動かす方向を変えることで、以下の通りさまざまな形状に加工できます。
| 加工の種類 | 加工内容 | 仕上がり形状 | 代表的な部品・用途 |
| 外径加工 | 工作物の外周にバイトを当て、直径や円筒面を整える | 一定の直径を持つ円筒形状 | シャフト、ピン、ローラー |
| 段削り | 外径の異なる部分を連続して削る | 複数の直径を持つ段付き形状 | 軸受や歯車を取り付けるシャフト |
| テーパー加工 | 軸方向に沿って直径が変化するように削る | 円すい形状 | 位置決め部、工具の取り付け部 |
| 端面削り | 工作物の端部に工具を当て、平らに仕上げる | 回転軸に対して垂直な平面 | シャフトやフランジの基準面 |
| 面取り加工 | 部品の角を斜めに削り、鋭いエッジやバリを除去する | 角部を斜めに落とした形状 | 組立部品、作業者が触れる部品 |
| 溝加工 | 外周または内周の一部分を削り、溝を設ける | 円周方向の溝形状 | Oリング、止め輪、シールの取り付け部 |
| 突っ切り | 溝加工を工作物の中心まで進め、棒材から部品を切り離す | 棒材から分離された完成部品 | 小型部品の連続加工 |
| 穴あけ加工 | 回転中心にドリルを当てて穴をあける | 軸中心に沿った穴 | 中空部品、内径加工の下穴 |
| 中ぐり加工 | あらかじめあけた穴を中ぐりバイトで広げ、精度を整える | 高精度な穴や段付き穴 | 軸受穴、精密穴 |
| 内径加工 | 穴の内側を工具で削り、内径寸法や表面を仕上げる | 一定の内径を持つ円筒形状 | カラー、ブッシュ、スリーブ |
| ねじ切り | 外周または内周に沿って工具を送り、ねじ山をつくる | 外ねじまたは内ねじ | 締結部品、配管接続部 |
複数の加工方法を組み合わせれば、シャフトやブッシュ、フランジなど、用途に応じた円筒部品を製作できます。
ただし、複雑な形状や特殊な工具を必要とする加工は、工程数や加工費が増えてしまう場合があります。
設計時には加工方法を考慮し、標準的な工具や規格寸法を利用できる形状に設計することが重要です。
旋盤加工が選ばれる3つの理由!高品質なものづくりを支える技術

旋盤加工は、高い寸法精度が求められる軸やシャフトをはじめ、幅広い機械部品の製作に用いられています。
加工精度だけでなく、対応できる材質や生産数量の幅広さも、旋盤加工が選ばれている理由です。
ここでは、そんな旋盤加工の3つの強みを紹介します。
1.高い加工精度を実現できる
旋盤加工では、工作物を回転させながら工具で削るため、回転軸を基準とした外径や内径、端面を高精度に加工できます。
同じ固定状態で複数の外径や内径を加工すれば、各中心軸のずれを抑え、同軸度や振れが求められる部品にも対応できます。
そのため、軸受とのはめ合い部やシールとの接触部、回転ローラーなど、高い寸法精度や滑らかな表面粗さが求められる部品に適した加工方法といえるでしょう。
ただし、対応できる精度は設備や材質、部品形状、加工径などによって異なります。
必要な公差や表面粗さを図面に明記したうえで、加工会社へ事前に確認しておきましょう。
2.幅広い材質を加工できる
旋盤加工では、炭素鋼やステンレス、アルミニウム、銅、真鍮などの金属に加え、エンジニアリングプラスチックをはじめとする樹脂も加工できます。
そのため、強度や耐食性など、部品に求められる性能に合わせて材質を選択できる点も魅力の一つです。
ただし、材質によって硬さや粘り、熱の伝わり方、切りくずの出方は異なります。
したがって、安定した品質で加工するには、材質に合わせて工具の種類や回転数、送り速度、切削油などを適切に選定することが重要です。
なお、耐熱性や耐薬品性をはじめとして、複数の優れた特性を有するフッ素樹脂を利用すれば、材料変更だけで設計課題を解決できるケースもあります。
詳細は以下の記事にまとめているので、興味のある方はあわせてチェックしてみてください。
関連記事:【設計者必読】フッ素樹脂5種の使い分けと失敗しないための設計ルール
3.試作から量産まで対応できる
旋盤加工は丸棒などの材料から直接部品を削り出すため、単品や試作、小ロットの製作に適しています。
設計変更が生じても、図面や加工条件を修正するだけでよく、開発段階の部品製作にも活用できます。
汎用旋盤は、作業者が工作物の状態を確認しながら工具を操作するため、単品製作や修正加工、現物合わせといった柔軟な加工が可能です。
一方でNC旋盤は、作成した加工プログラムを繰り返し使用できるため、同一形状を複数製作する量産に適しています。
ただし、適した設備は部品の大きさや形状、製作数量によっても異なります。
発注時には試作数量だけでなく、将来的な量産予定も伝えたうえで、試作から量産まで一貫して対応できる設備や生産体制が整っている加工会社を選びましょう。
旋盤加工の設計を最適化!加工時間を短縮する4つのポイント
旋盤加工は効率良く削れる反面、工程の多い複雑な形状を指定すると加工時間が長くなる傾向にあります。しかし、加工手順を考慮した設計をすれば、加工工程を減らし、加工時間や製造コストを抑えることが可能です。
ここでは、部品に必要な機能を維持しながら加工性を高めるために、設計段階で注意すべき4つのポイントを解説します。
1.固定しやすい形状にする
旋盤加工では、工作物をチャックなどで固定して高速回転させる必要があるため、安定してつかめる部分が欠かせません。
完成後の形状だけでなく、加工途中にどこをつかみ、どの端面や外径を基準にするかまで考慮しておくことが大切です。
つかみ代が不足すると、材料を長めに用意したり、加工後に除去する余肉を設けたりする対策が必要になります。
専用治具や特殊な爪の製作が必要になれば、加工費はさらに増加します。
また、薄肉部を直接つかむとチャックの締め付けによって変形するおそれがあるため、設計時には注意しましょう。
2.加工工程を減らす
工作物1回の固定で加工できる範囲を増やせば、取り外しや付け直しの回数を減らせます。
加工時間を短縮できるだけでなく、位置合わせによる誤差も抑えられるため、寸法精度も安定します。
円筒面や中心穴、同軸上にある段部などは、同じ回転軸を基準にまとめて加工できないか検討してみましょう。
一方で、側面の平面や軸中心から外れた穴、角形状を追加すると、フライス盤への移し替えや追加工程が必要になります。
機能上不要な段差や溝形状がないか、見直すことも大切です。
どうしても複雑な形状が必要な場合は、旋削とフライス加工を1台で行える複合旋盤の利用も検討しましょう。
3.公差と表面粗さを見直す
寸法公差や表面粗さを必要以上に厳しく設定すると、仕上げ加工や工具補正、測定、再加工などの工数が増え、加工時間や製造コストが上がります。
図面全体に一律で厳しい精度を指定するのではなく、以下に示すような性能に直結する必要な箇所に限定して、公差を指定しましょう。
- 軸受とのはめ合い部
- シールとの接触部
- 摺動部
- 位置決め部
表面粗さについても、摺動面やシール面などの滑らかさが必要な部分を個別に指定する方が望ましいです。
必要な精度を判断できない場合は、部品の用途や相手部品、使用条件を加工会社に伝えたうえで、実現可能な公差とコストのバランスを相談しましょう。
4.加工しやすい材質を選ぶ
材質は、完成部品の強度や耐食性だけでなく、切削速度や工具寿命、表面性状、加工時間にも影響します。
必要以上に硬い材料や難削材を指定すると、切削速度の低下や工具交換回数の増加につながり、加工費が高くなります。
まずは、使用環境や荷重、温度、腐食性などから部品に必要な性能を整理し、必要以上に高性能な材質を指定していないか確認しましょう。
また、完成寸法に近い標準径の丸棒を選べば、切削量を減らして材料費と加工時間を抑えられます。
ただし、材質変更には強度や耐久性の確認も必要です。
価格だけで判断せず、設計要件と加工性の両面から最適な材質を選びましょう。
旋盤加工を発注するなら要確認!品質を守る4つの確認事項

旋盤加工では、直径寸法だけでなく、工作物の固定方法や加工基準によって仕上がりが変わります。
また、回転部品では同軸度や振れなどの精度も、品質を左右する重要な要素です。
ここでは、発注後の認識違いや品質不良を防ぐために、事前に確認しておきたい4つの項目を解説します。
1.基準面とつかみ方を確認する
旋盤加工では、どの端面や外径を基準に工作物を固定するかによって、加工順序や仕上がり精度が変わってきます。
まずは、図面上で長さ寸法の基準となる端面を明確にしておきましょう。
あわせて、完成品のどの部分をチャックでつかめるか、傷や変形を避けたい箇所はどこかを加工会社へ伝えておくことも重要です。
外観面や仕上げ面しか固定できない場合は、保護材や特殊な爪、専用治具が必要となり、加工費が増加する可能性があります。
加工基準と設計基準をできるだけそろえておくことで、寸法管理や測定の難易度が下がり、加工精度が安定します。
2.同軸度や振れの精度を伝える
シャフトやローラー、回転軸では、各部の直径が公差内に収まっているだけでなく、複数の円筒面の中心軸がそろっていることも重要です。
特に、軸受の取り付け部やシール面、歯車・プーリーの取り付け部などは、相互の軸関係を明確にしておく必要があります。
「振れを小さくしたい」という抽象的な指示ではなく、基準とする軸や面、測定位置、必要な円周振れや全振れを図面に示しましょう。
高速回転する部品では、振れが振動や異音、摩耗、製品寿命に影響を及ぼす可能性があるため、特に注意が必要です。
加工方法とあわせて、測定方法や検査表の提出要否についても事前に打ち合わせましょう。
3.長尺・薄肉・深穴は事前に相談する
細く長いシャフトは、切削抵抗によってたわみや振動が発生し、寸法精度や表面性状が安定しにくいです。
長尺部品では工作物の端部を支える心押し台や、中間部の振れを抑える振れ止めによる支持が必要になる場合があります。
したがって、設備の最大加工長だけでなく、安定して加工できる長さの確認も必要になるでしょう。
また、薄肉のリングやパイプ形状は、チャックの締め付けや切削熱によって変形し、加工後に寸法が変わることがあります。
深穴や細長い内径では、工具のたわみや振動、切りくずの詰まり、切削油の届きにくさが品質低下の原因となるでしょう。
加工が難しい形状がある場合はその形状に加え、材質・長さと直径の比・肉厚・穴径と深さ・必要な公差を加工会社へ伝え、使用する設備や固定方法を設計段階から相談することが重要です。
4.対応設備と類似部品の加工実績を確認する
旋盤加工の対応可否は、加工会社が保有する設備の最大加工径や最大加工長、主軸の貫通穴径、工具構成などによって異なります。
汎用旋盤・NC旋盤・複合旋盤・自動旋盤では、得意とする形状や数量、部品サイズも異なるため、依頼内容に合う設備があるかも確認しましょう。
側面穴や平面を含む部品では、複合旋盤で一度に加工できるのか、別の工作機械へ移し替える必要があるのかによって、加工時間や精度、費用が変わってきます。
また、対応設備があっても、加工に関する知識や経験がないと、加工品質を担保できない可能性があります。
設備仕様だけで判断せず、依頼する部品に近い材質、サイズ、形状、公差の加工実績があるかも確認しましょう。
まとめ|旋盤加工を理解して品質とコストを両立しよう
旋盤加工は、工作物を回転させながら工具で削ることで、軸やシャフト、カラー、ブッシュなどの円筒部品を製作する加工方法です。
高い加工精度や、金属から樹脂まで幅広い材質を加工できる点が旋盤加工の強みといえるでしょう。
一方で、品質とコストを両立するためには、材料選定や公差設定を工夫するだけでなく、長尺・薄肉などの加工が難しい形状については、事前に加工会社へ相談することが大切です。
プラスチック精密切削加工を手がける伸光製作所では、創業以来培ってきた技術とノウハウを活かし、樹脂部品の高精度な旋盤加工に対応しています。
樹脂材料の旋盤加工を検討している方は、伸光製作所へ相談してみてはいかがでしょうか。
